白紙の彼方

All for one, one for all.

おすすめなろう小説の感想を溜めていく記録【連載中 ⑴】

 

こんにちは。最近ブクマが400を超えたから完結済みをカテゴリ移したりして誤魔化してたんですけどもうどうしようもなくなって今はChromeのタブが20個くらいあるなろうオタクです。

人にオススメしたりする時に確認するためのメモみたいなもののつもりですけどもし読みたいなろう小説を探している方がいたらその手助けになればいいかななんて思って書いていきます。

結構前に書いた似た内容の記事を間違って消してしまったので内容はそことかぶる部分もあります。ご了承ください。ちなみにタイトルに連載中ってありますけどここでは「最終更新がここ一年以内で未完結の作品」を対象とします。完結済み編もいつか書きます。

 

  • 異世界迷宮の最深部を目指そう
  • 全肯定奴隷少女:1回10分1000リン
  • ポンコツ・クロニクル 〜過去の世界にタイムスリップしたので、のちの偉人となる英雄少女に恩を売って成り上がる(はずだった)
  • 廃神様と女神様Lv1
  • 勇者が不死身すぎてつらい
  • 私の従僕
  • シャングリラ・フロンティア  〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜
  • 昏き宮殿の死者の王
  • 嘆きの亡霊は引退したい  〜最弱ハンターは英雄の夢を見る〜

 

異世界迷宮の最深部を目指そう

https://ncode.syosetu.com/n0089bk/

異世界に迷い込んだ少年は見覚えのない暗い回廊で目を覚まし、魔物にも人間にも殺されかける。その後、彼は元の世界に帰還する為、迷宮の『最深部』を目指すことになる。世界に優遇された全てを利用し、才能ある仲間たちと共に、少年は『最深部』に向かって進み続ける。――そして、迷宮にて待つ『理を盗むもの』たちの『試練』を乗り越えたとき、『貴方』が理無き世界の真実に辿りつく」

当時中学生だった僕をなろうの沼に引きずりこんだ元凶。ネタバレせずにめちゃくちゃザックリ紹介するなら「ファンタジー色のあるヒューマンドラマ」って感じだけど明らかに言葉不足で読んでみろとしか言えない。ただ「文学」を求めるなら間違いなく読んで後悔しないので是非最終章まで読んでみましょう。最近始まったコミカライズがいい感じにこの作品の空気感を表現できてるのでそっちから入るのもアリ。書籍の出版状況と比べて異様にコンテンツがでかい(コミケで合同誌二回出してる)。Twitterで「いぶそうってどういう作品ですか?」みたいなことを呟いておけばエゴサから飛んできた古今東西のオタク達がFF外から怒涛のプレゼンをしてくれるから他の人の感想を知りたいならそれがオススメ。ちなみにこれは割とガチ。

 

 

全肯定奴隷少女:1回10分1000リン

https://ncode.syosetu.com/n7254ev/

「ここに来る人達はなぁ!!! いつもここで全肯定奴隷少女を買ってるんだよ!!!! わかってんのか!!!! なあ奴隷少女!!!! お前もそう思うだろう!?!!?」
  「まったくもってその通りなのよ!!!!」

主人公が奴隷少女ちゃんに肯定されて励まされながら成長していく話。気付いたらラブコメだった。主人公が告白する作品、実はあんま無い気がしてるのでそれだけで評価が高い。そしてめちゃくちゃ作り込まれた神秘概念のおかげでファンタジーとしての読み応えも非常に良い。個人的に一番好きなのは10話の奴隷少女ちゃんが主人公の悩みを肯定するところなんだけど相手の弱音を受け止めるって「優しい」なぁ…ってなった。展開のテンポもちょうどいいし様々な要素が揃った良作。 

 

 

ポンコツクロニクル 〜過去の世界にタイムスリップしたので、のちの偉人となる英雄少女に恩を売って成り上がる(はずだった)〜

https://ncode.syosetu.com/n2207fq/

大昔に魔法が存在したものの、今ではそれが失われてしまった世界。

 魔法遺物の盗掘を生業とする主人公・アランはある日『大英雄の使っていた魔杖』を発見するが、それと同時に魔法の存在した過去時代にタイムスリップしてしまう。

 元の時代に未練もなかったアランは、魔法時代で財産を築いて成り上がることを志す。
 そのために杖の担い手である大英雄を探し出し、高値で売り捌こうとするが――



 彼が出会った『大英雄』は、とても後の傑物とは思えないほど、無能でポンコツな少女だった。

 この作品はクオリティがどうこうって以上に僕が個人的にめちゃくちゃ好きな主人公だった。隣の女の子を偶像崇拝する捻れたオタクいいぞ!!!!

コメディとしても面白いけどやっぱこの作品の魅力は登場人物。主人公以外も結構いい性格してる奴ら多いし。主人公の一人称視点での心情描写もストーリー展開も会話表現も全部が「好き」なので客観的評価は難しいけど大好きなのでおススメです。

 

 

 廃神様と女神様Lv1

https://ncode.syosetu.com/n2399bo/

 高度演算システムIRIAを積載したVRMMORPG『エルドラドゲートオンライン』――現実の『記憶』を奪い存在を抹消しにかかるデスゲームに現実世界から召還されたロクロータ、キク、赤い竜らの『廃人』達が挑む。
 『レジアン』と呼ばれる現実世界の召還者、『イリア』と呼ばれるNPCパートナー、『悪意』を載せたゲームの思惑、そして、倒すべき『魔王』とは――
 ゲームの謎と現実の謎がクロスし謎が謎を呼ぶ『エルドラドゲートオンライン』の世界を『PKプレイヤー』超外道主人公ロクロータと『パートナーイリア』超不遇ヒロインチュートリアが駆け抜ける。
 ――『廃神様と女神様Lv1』第一部『導入編』終了。※ストレートなギャグ表現とネトゲ的外道行為に耐性の無い方はご遠慮下さい※

あるべきゲーム転移モノの姿の1つ。廃人プレイをしっかり書き込んでるってだけでも頭1つ抜けてるんだけど特に主人公の廃人としてのメンタルの強さとふとした時に顔を出す望郷の念の書き分けがめちゃくちゃ上手い。この2つのギャップ、特に後者の心情描写が心に突き刺さる。もっとも、基本的にはスラングとギャグでゲラゲラ笑える作品。文章の下ネタで笑わせてくるのは本当にギャグセンスが高いと思う。

 

 

勇者が不死身すぎてつらい

https://ncode.syosetu.com/n1643by/

よくある普通の剣と魔法のファンタジー世界にいる魔王に召喚された悪魔さん。勇者が死ぬか100年経つまで魔王に仕えることになったが、当然のように勇者は不死身だったわけで――魔王城にひきこもった魔王と悪魔が不死身の存在を倒す作戦を立てまくる、ぐだぐだファンタジー・コメディ! 
毎週土曜か日曜に更新中!

金髪ロリと黒髪ロングメイドとメガネ巨乳メイドと女学生が頑張る第2部始めちゃった!

 一本筋のストーリーに沿ってゆっくり進んでいく独特のテンポが良い。それにある話で出た話題がちゃんと次に繋がってたりするからストーリー上で足踏みしてる感覚もなくのんびりと読み進める。コメディはとりあえずある程度まで読んでから作風が肌に合うかで判断するのが一番だと思ってるのでとりあえず気になったら読んでみてほしい。

 

私の従僕

https://ncode.syosetu.com/n8801fh/

 俺は公爵家の奴隷に拾われた。捨て子だったらしい。だから俺も奴隷。奴隷というのは働くのが普通で、むしろ働かない奴隷なんていない。なので俺も働いた。休みなく働いた。しかし旦那様はお優しく、俺達のような奴隷にも『自由』な時間をくれるという。他の奴隷が自由な時間を休憩に費やす中、俺はその時間で将来役に立つと言われた勉強をしていると、天使のような子供が現れて、こう聞いてきた。「あなたは誰?」と。だから答えた。「私は従僕です」と。間違いだった。その天使は公爵家のご令嬢で、お貴族様で、悪戯好きで、くそ餓鬼で。何故か気にいられてしまった俺は、そのお嬢様に連れられて王都の学園に行くことになった。

 この作者の一人称視点のリズム感がかなり好きで前作の頃からファンだったのでファンタジーものを書いてくれてめっちゃ嬉しい。特に戦闘シーン、独特の迫力と臨場感がよき。あと序盤に出てくる「よくわかんない謎の力」みたいなのは想像力掻き立てられていいよね…。まだ序盤の方だけど一章あたりの厚みもある程度ある書籍化も決まってるしこの先が非常に楽しみ。時間飛ばして五章くらいまで一気読みしたい。

 

 

シャングリラ・フロンティア  〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 

https://ncode.syosetu.com/n6169dz/

世に100の神ゲーあれば、世に1000のクソゲーが存在する。
バグ、エラー、テクスチャ崩壊、矛盾シナリオ………大衆に忌避と後悔を刻み込むゲームというカテゴリにおける影。
そんなクソゲーをこよなく愛する少年が、ちょっとしたきっかけから大衆が認めた神ゲーに挑む。
それによって少年を中心にゲームも、リアルも変化し始める。だが少年は今日も神ゲーのスペックに恐れおののく。
「エンカ率が常識的とか神ゲーかよ……」

深淵。アニメ化してほしいラノベランキング7位おめでとうございます!(未書籍化)

読む前は「クソゲーじゃこんなの日常茶飯事でしたw」みたいなマウントを取り続けてきそうとか考えてたけど覗いてみたら深淵だった。世界観とか設定がしっかりしてるのであらゆる描写に厚みがあって読み応えが最高。主人公はクソゲー云々以前にプロに片手かかる位にはPS高い狂人位に認識してた方がしっかり状況把握できる気がする。設定深すぎて順番に更新追ってたらいろいろ忘れてるとこがあるのが難点。一章終わる毎に1話から一気読みキメたくなる。早く書籍化しろ。税納めさせてくれ。

 

昏き宮殿の死者の王

https://ncode.syosetu.com/n6621fl/

――死にたくない。自由が欲しい。
そのためならば、僕は――甘んじて『怪物』になろう。

全身に絶え間ない激痛が奔り、衰弱の末死に至る奇病。
それに冒された少年は数年の苦痛の末、絶望を感じる余裕もなく誰にも看取られることなく生を終える。

そして再び目覚めた時――少年は邪悪な死霊魔術師の力により、最下級アンデッド、『死肉人』となっていた。

念願の痛みを感じない身体を手に入れ、歓喜する少年だが、すぐに自分の立場が未だ支配され、病室に軟禁されていた頃と大差ない事に気づく。

ただ平穏を求める少年を、世界は放っておかなかった。

死霊魔術により死体から少年を蘇らせ、エンドと名付け支配せんとする死霊魔術師。
闇に属する者をどこまでも追い詰め、滅する事に命を賭ける終焉騎士団。
多数の魔物を配下に収め、各地に君臨し覇を争う魔王達。

目的は生存と自由。必要な物は力と注意深さ。

これは、自由を求め、時に戦い、時に逃げ出し、時に怯え、時に躊躇う、臆病な死者の王の物語。

この作者さんの作品はカクヨムのも含めてだいたい好き。この人も一人称視点に独特のリズムみたいなものを持ってる気がする。軽めのダークファンタジー。主人公は生存と自由への執着が根っこにへばりついてるからそれが絡むとめちゃくちゃ強硬だけどそれ以外の時のノリの軽さがいい感じの高低差を作ってて物語に緩急をつけてる。それとたまにあとがきで笑ってしまうのが悔しい。あとがきが面白い作品はだいたい本編も面白いの法則。

 

嘆きの亡霊は引退したい  〜最弱ハンターは英雄の夢を見る〜

https://ncode.syosetu.com/n6093en/

世界各地に存在する宝物殿とそこに眠る特殊な力の宿る宝具。富と名誉、そして力。栄光を求め、危険を顧みず宝物殿を探索するトレジャーハンター達が大暴れする時代。
幼馴染達と共に積年の夢であるハンターとなったクライは、最初の探索で六人の中で唯一自分だけ何の才能も持っていないことに気付く。
しかし、それは冒険の始まりに過ぎなかった。
「もう無理。こんな危険な仕事やめたい。ゲロ吐きそう」
「おう、わかった。つまり俺達が強くなってお前の分まで戦えばいいんだな、いいハンデだ」
「安心してね、クライちゃん。ちゃんと私達が守ってあげるから」
「あ、ストップ。そこ踏むと塵一つ残さず消滅しますよ。気をつけて、リーダー?」
強すぎる幼馴染に守られ、後輩や他のハンターからは頼られ、目指すは英雄と強力な宝具。
果たしてクライは円満にハンターをやめる事ができるのか!?

一個上と同じ作者の作品。勘違いモノ。なんか知らないけど敵をやっつけちゃったみたいなタイプじゃなくて周りの人に処理を押し付けるタイプだから本人は普通に弱いやつけど煽るのは異様に上手い。コメディ色が強いので読んでみてくださいとしか言えない。あとコミカライズしてる。そっちもなかなかいい味味出してるのでオススメ。

 

 

 

蛇足

いぶそうとかシャンフロみたいな展開規模に対して異様にファンコンテンツがでかい作品があるのなろうの闇を感じるよね。個人的には今は一括りで「ラノベ」だけどこの先上記2作みたいな作品としての完成度とか文学的な要素で売れるラノベとどっちかっていうと消費される娯楽としての側面の強い均質的なラノベの2つに分岐してくと思ってる。この2つはマジで別物だと思ってるから早く分けてほしい。メディア化とかは後者の方が圧倒的にしやすいから今はそっちが主流だけどきっといつか前者が日の目を見るときが来ることを期待しながらこんな記事を書いてた。

なろうにおける前者のスコップはランキングがあてにならない以上Twitterとかこういうブログのお世話になっているのでそういった人たちの一助となれますように。

 

 

ブクマ漁ってたら思ったよりエタってる作品多かったのでそのうち【更新停止編】を出すかもしれません!!!!一緒に地獄にいこうな!!!!!!!!!!

 

 

感想、誤字脱字の報告、苦情などは@ke_readまで。

 

 

 

 

 

 

 

映画「いなくなれ、群青」原作オタクの感想・考察記事

はじめに

  こんにちは。本日公開の映画「いなくなれ、群青」を見てきたオタクです。長所は手首が360度回ることです。原作大好きマンから見た今回の映画の感想と考察について書いていきたいと思います。

  なお、以下階段島シリーズ1〜2巻と映画のネタバレを含みます。

  ちなみに前記事にて公開前の予想などを述べているのでそちらも暇があればご覧いただけるとより本記事を楽しめると思います。

farthestlog.hatenablog.com

 

ストーリー

 

  (おそらく)尺の関係で映画版と文庫版の2作ではストーリー展開が結構違います。

  その中でもいくつか気になる点をあげると、

  • 大地がいない
  • 定期便が止まったりしない
  • ヴァイオリンの弦があっさり見つかる
  • 豊川が現実に帰る

  残りの違いについては人物の項で後述するのでとりあえずはこの4つですね。

  まず、前3つの項目に関しては全部尺の都合だと考えれば全部納得がいきます。

  前記事でも述べたように限られた尺の中で大地の問題を解決するのはほぼというか絶対無理なのでそこを削り、そのかわりに文庫版2巻でも登場した豊川と彼女の周りで起こる問題によって階段島の在り方に対する問題を投げかける。音楽祭までの期間が短い(確か弦が切れてから三日後)だから定期便を待つ余裕は無いからあえて止める必要はないし、そもそも時間軸がクリスマスでない以上わざわざ堀が定期便を止める理由もない。ヴァイオリンの弦の入手方法は多分七草が魔女を特定したりしようとしなければ文庫版でもこうやって優しい魔女が届けてくれたと思います。

  特筆すべきは4つ目の「豊川が現実に帰る」ことについてです。

  僕個人としてはこれはとてもよい原作改変だと思います。映画内で豊川は音楽会を乗り越えることで捨てた自分の弱さを克服してるのでその豊川が現実に拾われるのは当然の帰結なはずです。あと灯台が光ってる描写がほんとにいいですね。今回の映画でトップクラスに好きなシーンです。

 

人物

 ここが今回1番個人的主観が強いところになります。あらかじめ言っておくと今回の出演者の中で僕が知ってる名前はゼロなので全員初見です。それと言うまでもないことですが僕は演技のど素人なので上手い下手の判断ではなく、「僕の中の原作キャラと比べた時の判断」です。あしからず。

 

七草

 今回のキャストの中で一番僕のイメージする人物像に近かった。会話中のためや表情、目線やちょっとした動作からニヒリズムが溢れてる。特にちょこっとだけ俯くようなシーンがほんとにすげえ。横浜流星より上手く七草を演じられる人間が思いつかない。

  そして同時に個人的に原作と一番違うキャラ。七草の抱く、ピストルスターに対する並外れた感情があまり伝わってこなかった。他人を信仰するタイプの人間はどこか相手を自分と同じヒトだとは思ってない節があると思ってるので(春琴抄の佐助をイメージするとちょっと伝わる気がする、彼とはベクトルがかなり違うけど熱量はそう変わらないと思ってる)そのヤバさを感じたかった。正直ここら辺を一番期待してましたね、僕が文庫版1巻で一番好きなのは七草が現実の七草に対してキレるシーンなので。そこら辺がカットされた七草、なんか丸すぎるんだよな。

  多分ここは何が言いたいか伝わってないと思うんですけど要は映画の七草、解釈違いだってだけです。

真辺由宇

 真辺も僕が普通とのズレを期待していた人物だったしなんなら真辺は言動のいたるところに異質さが垣間見えてるはずだって思ってるので七草よりも全然ハードルは高かった。原作の、特に1巻は七草の一人称が多いからその分真辺の特別性が強調されてる印象があるんですよね。それが表現されてたら多分劇場で号泣してた。

 でもそれ以外の、真辺の普通の女の子要素はめっちゃうまかった。多分現実世界の真辺やらせたらめっちゃくちゃハマると思う。

 

佐々岡

  これは残りの何人かの人物に関しても言えるんですけど僕がこの映画見て思ったのは全体的に階段島の住民達の「失くしもの」がだいぶマイルドに表現されてる気がします。先述の2人に関しても僕の思い入れが強すぎて納得いかないだけで多分そういう話ですよね。佐々岡に関しては2巻で言及された『純白』、つまり主人公への憧れが思ってたよりも強くないのかなって感じがしました。原作の表現を借りるならこの映画の佐々岡は混色であることをある程度受け入れているみたいな。そのうえで映画の佐々岡は原作よりもより現実感のある高校生としていいキャラが出てたと思います。

 

委員長

 原作の佐々岡と委員長って「白」でも描写された通り『純白』を目指してるわけですけど映画の委員長もやっぱりそんなに『純白』を意識するようなキャラメイクはされてないんじゃないかなと思います。「望んだ対応をする完璧な鏡」を目指すっていうよりはもうちょっと控えめな「みんなによく思われたい」位なのかなって認識です。

 委員長が『純白』を目指すならその体現である真辺に対する苦手意識のようなものがもっと伺えると思うんですけど映画内では一番感情的になるのが自分と同じ混色である佐々岡なあたりは多分『純白』への執念より同族嫌悪的なものの方が優越してるってことなんですかね。僕が「白」で一番好きな部分は終盤で委員長が真辺に対して「メリークリスマス」って渾身のプライドを込めて言うところなのでそういう委員長が見れなかったのはちょっと残念でした。

 でも、映画の委員長をそういった混色寄りのキャラクターだとするなら本当にうまい演技だと思います。特に感情的になる部分、僕が高2の時の風紀委員長まるっきりこういうタイプでした。

 

 評価できない。流石にこの尺で堀を映像で表現するのは無理がある。どんなに演技うまい女優でも無理だわ。そもそも原作だって2巻まで読んで堀をどこまで理解できるかって言われたら本当に浅いとこしか理解できない気がするし。なので観る前までは正直ただの無口で無表情な女の子になってもこればっかはしょうがないな、なんて思ってました。いや、凄いですね。口を開くまでの間とかちょっと七草を気にするシーンが堀ポイント高い。想像以上に堀でした。堀の優しさを表現するなら冗長な手紙とかもっと堀に焦点を当ててかないと無理だと思うのであの映画の枠内で表現できるだけの堀を演じ切ったと思います。めちゃくちゃ個人的な解釈を言うなら堀は喋るときはちょっとアガった感じになるんじゃなくてゆっくりと絞り出すような感じで喋るんだと思ってます。素晴らしい。

 

100万回生きた猫

 え、名前全部「ナド」で通すの?って思ったけど100万回生きた猫について語る尺も七草と毒にも薬にもならない話をする尺も無いしそれもそうか。「失くしもの」がめちゃくちゃボヤけてなんかサボり癖のある不思議なお兄ちゃんみたいな感じになっちゃってる感じがありましたね。あながち間違っては無いけども。それでものびをするシーンとかは100万回生きた猫だった。「ナド」の役の中で「100万回生きた猫」っぽさを出せてるのは尊敬します。

 

豊川

 彼女は原作では「目上の人の前だとガチガチに緊張する」って感じだったけど映画では「人前でガチガチに緊張する」になってるのかなって印象でしたね。一人だけ「失くしもの」が重くなってる…。

 そういうことも踏まえるとやっぱり「白」と違い完全に自身のトラウマを乗り越えた彼女が島を出るって言う結末はすごい素敵だと思います。

 

トクメ先生

 前記事ではトクメ先生が仮面をつけてない理由が全くわかりませんでしたけど彼女もほかの人物達の例に漏れず「素顔で生徒と向き合えない」というのが無くなってますね。じゃあどうなったっていうと答えづらいですけど。あんま出てないし。ただ理由は納得できてほんとに良かったです。彼女と真辺の会話が教室だったのは結構意外でしたね。そこらへんは後述で少し掘り下げます。

 

時任さん

 近所の優しい配達お姉さんって感じ。グッド。彼女の傷が明らかになるのは5巻だしこの映画が作られてる間は監督が4巻までで読むのを止められてたそうなので時任さんについて詳しく掘り下げることは無いですけどEDで白ワンピ着て堀と一緒に出てくるシーンはへんな声出そうになりましたね。セリフもいい……。キョェッ(絶命)。

 

小暮

 彼が消えた日の昼食を七草が佐々岡と食べてたのを見たときは優しいなって思ったんですけどもしかして映画内で七草が普段100万回生きた猫と飯食ってるって描写無くてもしかして七草、いつも教室で飯食ってるのか…...?ってなりました。ここも後でちょっと触れます。

 特別掌編も、コミックス1巻の話も好きです。

 

全体・考察

 それでは今までの要素を踏まえた上でこの映画に対する僕の感想と考察を書き連ねていきたいと思います。

 

 まずは「階段島」について。

 この映画は本当にうまく階段島の生活を描けていると思います。

 ただ、この島(と堀)の「優しさ」がうまく伝わらなかったな、という感想も抱きました。これは登場人物達の「捨てられた人格」がマイルドになったって言ったのと関係してるんですけどそれのせいで現実感が出過ぎちゃってるんですよね。勿論、原作未読の一般層に対してのウケを考えるならある程度感情移入が出来る方がいいっていうのはその通りなんですけどそれでも階段島が非現実だっていう意識が根底にあるからこそあの島の持つ「優しさ」っていうのが引き立つと思ってるので、そこは仕方ないとは思いつつも結構残念でした。ただ、最後の雪が降るシーン、あそこは本当に優しい階段島そのものでした。ありがとう。

 

 「現実感」について。

 直前の話題と同じようなものなんですけどこの作品って原作と比べたときにいくつかの部分をより現実っぽく落とし込んでるような気がするんですよね。トクメ先生の仮面だったり100万回生きた猫の名前もそうですけど、トクメ先生と真辺の「納得」に関しての会話もその一つだと思います。勿論尺という理由もありそうですけどあの会話とそのあとの七草と真辺のやり取りが教室で行われたのを見て僕は薄らと「この物語は真辺と七草じゃなくてこういう学校が基軸になるのかな」なんてことを思いました。七草もいつもみんなでご飯食べてる感じだし。あとは真辺が電柱に飛び蹴りしたり密航したり石で窓を割ったみたいな彼女の異質さを端的に示すエピソードがないせいで真辺がちょっと頑固な不思議ちゃんみたいな印象を抱かせてしまいそうだなとか思ってます。

 

 あと、ラストの真辺と階段登るくだりですね。

 大地のことが無くても七草なら現実の七草に対して「お前のせいで真辺が自分を捨てた、ふざけんな」位は言うと思ってるんですけどそれで変に引っ張るのもよくないから切ったんでしょうか。階段島の非日常さを示すものがことごとく削られてますね。

 まあ、そこは既に触れたので置いておくとして、僕が疑問なのは最後真辺が一度現実に戻った(多分)ことです。大地の件があって初めて真辺は現実で大地の問題を解決しなければと思って島を出ようとして、それでも結局島を出てないのに映画では現実に戻らなければならない理由もないのに真辺が現実に戻ったのが少しわかりませんでした。真辺なら階段島に対して納得のいく答えが見つかってないのに1人で現実に戻るなんて絶対にしないと思ってるんですけどどうしてなんでしょうか。考えられる理由としては島に残る理由を「真辺と七草が一緒にいれることの証明」にする際にその動機づけのためには階段で真辺自身と出会って話すか一度現実に戻らなくてはいけなく、階段で自分自身と話すと七草同士の会話も必然的に必要になるから一度現実に戻ったことにしたって感じですかね。ほかの意見がある方は是非教えてください。割とマジで気になってます。

 

 まとめに入る前に余談です。

 先程僕はキャストは全員初見だって言ったんですけど実は製作陣の中に2人、知ってる方がいるんですよ。それは主題歌を手がけたsalyu小林武史さんです。去年のap bankフェスは三日間全て最前から2列くらいに位置取って友人と一緒に盛り上がったくらいにはファンです。「僕らの出会った場所」いいですね。小林武史さんの歌詞と曲もいいけどsalyuの声がいい。堀の優しさの具現だよあの声は。優しいんだ……。いや、本当に素晴らしい。こればっかりは元々好きなので客観的に評価できなくて申し訳ないです。でもsalyu好きだ……。ありがとう……。

 

 

最後に

 僕はこの映画は「階段島が舞台の青春の話」としてはめっちゃくちゃ評価してます。階段島シリーズを映画に落とし込んだ作品としては限りなく最高に近い作品だと思ってます。監督すげーよ、ほんまにこれで新鋭なんですかってレベル。これは未来予知ですけど絶対監督これからヒット作作るから情報チェックしておいて損はないです。

 

 ただ一方で、僕の主観からすればこの映画は「階段島シリーズ」の映画化としては失敗だとも思ってます。

 僕が階段島シリーズを読む時に重点を当ててる部分の悉くが切り捨てられてる。ピストルスターへの想いや「失くしもの」以外にも例えば音楽会で真辺がピアノで勇気付けたシーンとかもあまり納得できませんでしたね。なんでそんな綺麗なやり方なんですか?いくら委員長に言われたからってそんな遠回りしないでしょ。どんだけ汚れても真辺はまっすぐ進んで、それを七草が照らし導くんでしょう。あそこで真っ先に動くのが佐々岡じゃなくて真辺なのはいいんですよ。でも真辺由宇はピアノに座る前に絶対豊川のところへ行くはずだ。

『いなくなれ、群青』でも『その白さえ嘘だとしても』でもないこの映画はなんなんだ。

 

 イメージで語るなら、階段島シリーズは一枚の綺麗な文様の紙で、それを映画化するっていうのはその紙を立体の箱の中に詰めて、それをラッピングするようなものなんですよね。ラッピングはめちゃくちゃ綺麗だし箱の中に詰めた紙も綺麗な文様が映えるようにめちゃくちゃ努力はされてるんですけど箱詰めにしてる以上見えない部分はあるし箱に詰める過程で折りたたんだ部分もあるんですよ。

 

 それの何が一番いけないってそもそも綺麗な紙を箱に詰めようとする発想自体がダメなんだと思います。なんで出来ると思ったんですか?僕この記事で何回尺って言葉使いましたか?なんで素人が映画の感想言うのにのに尺を考えなきゃいけないんだ。

 

 原作を知らない人がこれを見て『いなくなれ、群青』ってこういう作品なんだなって思うのが僕は何より悔しいです。

 

 僕は、この作品はお世辞抜きで素晴らしい作品だと思ってるし、もし大地や安達がいない階段島で始まる物語があるとしたらこれはすごくいいストーリーだと思います。ただ、そこに『いなくなれ、群青』ってラベルを貼ってるのが許せない。なまじ出来がいいからこそ、それを『いなくなれ、群青』と呼びたくないんです。せめて別のタイトルなら良かった。『受け入れる幸せは混色でいい』みたいな別タイトル(多分この作品を作れる監督ならもっといいタイトルを考えられる)で、階段島の別世界線での話としてこの映画が出たなら僕は絶対にこの映画を最大限に称賛しますよ。もっとも、そんなごく一部のファン向けの映画は実際に出ることはまずないですが。

 

 個人的にこういうネット越しでの一方的な中傷みたいなことするの大っ嫌いだし、中身だって最初から最後まで「クオリティは高いけど解釈違いです」って駄々捏ねてるだけの文章なので記事にするかは結構悩んだんですけど、こういうことを考えてる奴もいるってことをあの映画をご覧になったみなさんに知っていただければと思いここまで書きました。

 

 もし映画を見て原作未読、原作は読んでるけど映画を見てない、といった方がいらしたなら是非読んで、見てみてください。好き嫌いはともかく階段島に対する新しい視点が出来るのは間違いないです。何度も言いますけど映画のクオリティはマジで高いので。

 

 それでは。

 

 

  ご意見、ご感想は@ke_read まで。お待ちしております。オタクは語るのも語られるのも好きなので思いの丈をDMに連ねるだけでも歓迎です。

 

 

     追伸

 俺は正面にでっかくピストルスターが書いてあるだけのグッズが欲しかった。

 

2020年1月20日、大幅に加筆修正を行ないました。

 

 

 

 

 

 

映画「いなくなれ、群青」 公開前期待値

  • はじめに
  • 事前に分かっている映画版の情報
  • 映画に対する期待
  • おわりに
  •  

はじめに

原作との違いについて

映画に対する期待

おわりに

はじめに

階段島シリーズ大好きオタクです。

今回、映画『いなくなれ、群青』がもうすぐ公開ということで、現時点での公式サイトの情報などを元に映画版に対する期待や予想を書いていきます。映画見た後にも感想をブログで書く際に見る前の自分がどう思ってたかを認識できるようにするためのメモみたいなものなので流し読みしていただければ幸いです。

以下、文庫版階段島シリーズ2巻までのネタバレを含みます。

 

事前に分かっている映画版の情報

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FGO舞台レポート

 

  • 挨拶

 みなさん初めまして、けしごむです。

 シーズン4の構築をまとめようと思ってブログを作ってたんですが、結局シーズン4は1回もレート潜ってないのと想像以上にFGO舞台が素晴らしかったので、今回は秋のFGO舞台を見ようと考えてる人や、DVDを買おうか悩んでる人向けにFGO舞台に行ってきた感想をネタバレにならない程度に僕の拙い語彙力の許す限り伝えていけたらなと思っています。

 特に面白味も無いですが最後までお付き合いいただけると幸いです。

 FGO終章までのネタバレを含むかもしれないのでご注意を。

 

 

  • 感想

 早速感想に入っていきましょう。

 僕が会場に入って最初に思ったのは男女比が偏りまくってる事ですね。目測ですけど男:女が3:7とか2:8みたいな感じだと思います。ぼっちの男子高校生とかほかに全然見えなかったので相当肩身が狭かったです。FGOオタクの男性は舞台に行く際に意中の女性に「いやーFGOの舞台行きたいんだけど女性ばっからしくてきついからついてきてくれない?」みたいな感じでチケットぴらぴらさせてデートに連れて行くといいと思いますよ。僕は誘える相手がそもそもいません、たいあり^^。

 

 劇場内はそれなりに広く、全23列ほどでした。席と席の間はメタボの方が通るのは少し苦しそうだなって位ですかね。僕の席は後ろから2列目でしたけど、なんの問題も無く楽しめたのでどの席でも問題なく楽しめると思います。

 

 ただ劇場内のWi-Fi環境は相当悪かったのでデータのDLなどは事前にやっておいた方がいいと思います。僕はキャッシュクリア要求されて休憩中にガチャどころか周回も出来ませんでした。

 

 

 そろそろ内容の方にも触れていきましょう。今回の舞台はご存じのとおり6章のキャメロット特異点となっています。上映時間は間に15分休憩をはさんで3時間10分となっており、尺の関係上いくつかの場面がカットされていたり、何人かのキャラやサーヴァントは名前すら出てこないのが少しもったいないところ。セルハンは欲しかった。それを考慮してもストーリーの完成度はかなり高いと思います。

 特に場面描写の移り変わりや場面の対比は舞台ならではの良さがあってこの舞台の大きな見どころの一つだと思います。

 後は舞台ならではの要素としてキャラの動きが魅力ですね。セリフを喋ってるときのキャラの動きだけでなく戦闘モーションも迫力がありとても楽しめます。特に宝具に宝具をぶつけるシーンとかガウェインの宝具モーションは本当に鳥肌が立つレベル。個人的にはアーラシュとオジマンの戦闘シーンがすごく好きです。

 

 ここからはよくTwitterFGO舞台レポにも出てくるような印象的なシーンにも触れていきたいんですけど、ネタバレ要素減らすためにほんとにさわりしか触れないんで気になった方はTwitterで他の人の感想見たり是非秋のFGO舞台やDVDをお楽しみください。

・オジマンのダンスがキレッキレ

 ジャイアンみたいな曲調の歌歌いながらアクロバット芸かましたりキレッキレのダンス披露したり尺の関係上めちゃくちゃ話の分かるいい奴だったりして今回のオジマンディアスは賢王並の愉快王です。

・ベディが泣かせに来る

 途中何回かベディのソロ歌唱シーンがあるんですけど6章クリア済みで意味が分かってると相当泣けると思います。そして終盤でほんとに泣かせてきます。FGO6章の時点でもだいぶ泣けたんですけどやっぱ動きがあると相当インパクトありますね。今回の主人公鯖は伊達じゃなかった。

・ロマニがいる

そう、6章なのでロマニがいます。管制室からDr.ロマンのナビゲートが入ります。それだけで見に行く価値ありですね。一回ロマニがモニターの枠持って登場するシーンあるんですけど、僕が見に行った時は主人公がぐだ子だったので美女美少女4人が踊ってる感じあって非常にグッド。僕は後半開始直後のカルデアの一幕でちょっと泣きました。ラストのあいさつの時ロマニが手を振りながら登場したり退場するのほんと面白かったんでみなさんもぜひ見てください。

・槍アルトリアがかわいい

SUKI。

(個人の感想です)

 

 他にも伝えたい事はたくさんあるんですけどネタバレ踏みそうなので特に印象的な部分だけにします。見た人でここいいよねみたいなのはTwitterで言ってくれれば多分反応します。

 

  • 最後に

出るぞ。見ろ。

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追記

 物販についてなんですが、劇の前と後は非常に混むので行くとしたら休憩時間がオススメです。トイレ行ってから行ったんですけど並ばずに買えました。女性の方はトイレがものすごく混んでるのでそこらへんはご自身の判断に任せます。後飲み物は中で買うとペットボトル300円なんで絶対駅の自販機で買っときましょうね^^

 

 

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